エベレスト街道を歩く
カトマンズ~ルクラ
世界一危険な空港
ヒマラヤ街道のトレッキングの入口であるルクラへは飛行機で移動する。小型の飛行機で30分ほどだそうだ。ルクラにある飛行場、テンジン・ヒラリー空港は山を切り開いて作られ、世界一危険な空港とも呼ばれているそうだ。たまに飛行機も落ちているので、多少の不安を抱えつつも、それほど頻繁に事故があるわけでもなく、パイロットだって死にたくないはずなので、落ちたらその時は仕方ないと腹をくくる。
トリブバン国際空港
朝、カトマンズの中心部にあるホテルから空港に向かう。国際線も国内線もこの空港から離発着するとのことだ。そのため、天候が良くても、混雑して飛べない場合もあるという。
これから乗る予定の飛行機を待つが、カトマンズは快晴にもかかわらず、目的地のルクラの天候が悪いそうで、飛行機はなかなか飛ばず、旅行客はみなそわそわしている。もし飛んだとしても、引き返してくる可能性もあるとかで、なかばあきらめムードが漂っている。そのうち航空会社の受付窓口(と言っても屋台の出店のようなもの)からも人がいなくなってしまった。
ヘリコプターでルクラへ
しかし、飛行機はだめでもヘリコプターなら多少天候が悪くても行ける(滑走路以外に下りられる?)とのことで、ガイドさんが抑えてくれていたヘリコプター会社の人と交渉してもらい、他の旅行者との相乗りでルクラを目指すこととなった。 あとで聞いた話によると、この日は朝一の飛行機だけ飛び、その後のすべてのフライトはキャンセルとなってしまったそうだ。ヘリコプターは痛い出費だったが、あとのスケジュールを考えると最良の選択だったと思う。
ワンボックスの車に乗り、滑走路をぐるっと回り、整備途中のようだが野ざらしの飛行機を見ながら、ヘリコプターの発着場へ向かった。ヘリコプターはピストン輸送をしているが、私たちの乗る機体はまだ帰ってきていないそうで、待合室でしばらく待っていると、今度は早く来いと言われて荷物を持って急いで向かう。
ヘリコプターへ着いてみると、ドラム缶から人力で燃料を入れているところだった。そんな状況なので、すぐ飛ぶわけでもなく、写真を撮ったりしながら時間をつぶしていると、先に隣のヘリコプターが飛び立っていった。ローター(エンジン?)の音が変わったかと思うと、ふわりと浮かび上がり、一気に飛んでいった。
こちらのヘリコプターも準備が整い、荷物を持って中に詰め込まれる。パイロットは欧米系の人で、そのパイロットを含めて7人が機内に押し込まれた。前の席に乗ると、荷物やら足やらがいろいろな機器に当たってしまいそうだったが、パイロットは一向にお構いなしだ。そして心の準備が整わないままにふわりと浮かび上がり、あっという間に高度を稼ぎ、カトマンズの街を下に飛んでいく。
ある程度の高度まで上がると、それからはほぼ一定に飛んでいくだけで、ほとんど怖さなども感じない。
ヒマラヤの山々
カトマンズの街を抜けると次第に緑が多くなり、起伏も出てきた。眼下に集落を見下ろしたり、山のすぐ近くを飛んでいたかと思うと、ある山を越えた時、急に空中に放り出されたように、前方の視界が開け、足元の地面が突然なくなったように地面がぐっと下がり、かなり高度を感じるようになった。そしてもう一度前方を見ると、左の方に白いヒマラヤの山々が連なっていた。
名前はわからないが、ごつごつとしたヒマラヤの山々が連なっている。ヘリコプターは快適に飛び続け、ゆっくりと景色を堪能することができた。
ヘリコプターの前方にあるGPS(?)を見ていると、だいぶルクラへ近づき、もう少しだと思い始めたころ、ひとつ山を越えたと思ったら、前方に急に雲があらわれ、視界が悪くなってきた。雲の中に入ることもあり、これが気流が安定しないというのだろうか、機体も揺れはじめた。パイロットは足元からiPad(?)を引っ張り出し、何かを確認しているようだった。
おそらくルクラから飛んできた飛行機とすれ違った。ヘリコプターは雲が濃くなってもその中を飛び強行的に着陸するのかと思ったが、さいわい雲はそれほど多くなることはなかった。
ルクラの町とテンジン・ヒラリー空港
そして山の中腹に、ルクラの町とテンジン・ヒラリー空港が見えてきた。空港とはいうものの、ただの滑走路、しかも短いそれがあるだけのように見える。滑走路からはちょうど飛行機が飛び立とうとしているところで、それをやり過ごし、一気に滑走路へ向かっていき、そして着陸するかと思いきや、滑走路を外れ、その脇にあった芝生へと着陸した。
ヘリコプターが着陸してからは慌ただしかった。乗ってきた人と荷物を降ろしたかと思うと、今度はカトマンズへ帰る人と荷物を載せ、あっという間に飛び去っていった。
テンジン・ヒラリー空港
ヘリコプターが飛び去ると、音もなく、あたりは静寂な空気に包まれていた。飛行機では30分ほどのところを、ヘリコプターで小一時間、無事に着いた。ヒマラヤの山々もはっきり見え、なかなか快適な空の旅だった。ガイドさんもヘリコプターは初めてのようで、楽しかったと言っていた。ところでこのガイドさんは生まれも育ちもネパールの人なのだが、日本語がとても堪能で、旅行中とても頼りになった。
滑走路の脇を町へ向かって歩いていると、いきなりゾッキョがお出迎え。ゾッキョはヤクのオスと牛のメスの間の子で、荷物を運ぶのによく使われているそうだ。特に何かをしてくるわけではないが、ガイドさんからは触らないように言われているので、足元の糞も踏まないように、刺激をしないように避けて歩く、のはいいが、明らかに通せんぼをされているところがあり、そんな時はガイドさんが通れるように道を作ってくれた。
飛行機が飛んでいないせいか、人もまばらで、空港の建物と滑走路を見ながら、すぐ隣りにあるルクラの町へと向かった。
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